トンジール'99 Final Stage!!!

不定期連載 山道をゆく 第28話
99/12/30 足和田山、三湖台、紅葉台
【二つの汁】 
成瀬〜淵野辺〜上溝〜津久井〜三ヶ木〜
道志〜平野〜河口湖〜道の駅なるさわ--一本木--
足和田山--三湖台--紅葉台--道の駅なるさわ・「ゆらり」〜
平野〜道志〜淵野辺〜町田家
(〜:車、--:徒歩)
今日は6時前から、重成庵ではシチュー鍋がコトコトと煮音を奏でていた。今日は山だ、と言って
昨夜の忘年会を早めに辞去しようと思ったが結局終電までいてしまった。胃袋の調子イマイチなれど、シチューを一口口にするや否や食欲が回復した。やはり、私のシチューは偉大であった。
 
今日はもしかすると2人か3人しか集まらないのでは?と心配しつつ、小人数でも構わないと思いってはいたものの、なんとか5人が集まることになった。今回は特に、普段あまり歩かない、というメンバーもいて、どうなることやら。とは思ったが、昨日の打ち合わせで豚汁隊長が万全の体制を整えていてくれたようなので、万事うまく事が運ぶであろう。
 
道志までの道は、先週土曜日のMTB興行の道。特にR413三ヶ木までは、中央道相模湖ICへの車でごった返す心配があったが、それほどの交通量ではなかった。道志からの山々は、やはり気持ちを清々としてくれる。今日はやや雲が多めのようだが、豚汁が待ち遠しかった。
 
道志みちは途中凍結や、雪の跡があったものの、今年1月にバイクで苦しんだ路面状況より遥かに快適に通行できた。平野にて山中湖や富士が見渡せた。湖面の照り返しが眩しく、心地よいほど暖かく、豚汁が待ち遠しい。
 
R138、R139と入り、富士吉田市内にてかなりの交通量にはなったが、富士は相変わらず奇麗で富士急ハイランドも見え、豚汁が待ち遠しかった。
 
11時ちょい前に道の駅、なるさわに到着。今回の行程は、どこに駐車しようか迷ったが、車に帰り着いてすぐ温泉がベストと判断、道の駅なら駐車スペースの心配もなかろう、ということに落ち着き、豚汁が待ち遠しかった。
 
厄介なのが、一本木までの国道歩きである。歩道がなかったり狭かったりはしたが、まだ歩きはじめでメンバー各々のエネルギーは十分、豚汁も待ち遠しい。
40分ほどで国道歩きも終わり、いよいよ登山口である。ここからはゴールデンウィーク中に、「東海自然歩道行脚、神奈川・山梨・静岡の三県を股にかけろ!3泊4日の旅」にて3日目に通った道である。当時は足和田山から紅葉台へ抜けて、更に青木が原樹海を爆歩したほどエネルギーがあったのである。今日は初心者もいることだし、ややゆっくり目のペースで木段を登って行くことにした。豚汁が待ち遠しかった。
 
経験者にはアイゼン持参を予め言っておいたが、心配していた霜柱が融けてのぬかるみは、足和田山へのトレイルではまったく心配がなかった。雲が多く、日差しも年末店じまいといったほどの弱々しさであった。だが、割と明るい林の間である。足和田山さえクリアすれば、あとは屁の河童であろう。時々休憩をはさみながら、豚汁が待ち遠しかった。
'99最終足和田山最高地点!なんだかんだで1時間ほどで山頂に到着。五湖台との別名の通り、富士五湖全部を見渡せるらしいのだが、前回も見ていない。そして富士も雲に隠れてしまっている。時にもうすぐ13時になってしまう。午後の風が心配である。幸いテーブル席も開いている。できればここは早めに通過して、更に見晴らしの良い三湖台にて食事を考えていたが急遽変更、ここで1999年最終大豚汁大会開催と相成った。

ザックから、途中のコンビニで調達した「富士山」1リットル分、香港のセブンイレブンで買ったミネラルウォーターの入ったPet Bottle入りのKamoi Water 1.5リットル、そして、いつもシチューやカレーの煮られる鍋を取り出した。これだけを抱える前は今日の登りは非常に不安だった。だが、そんな心配は皆無であった。麦茶や水、鍋の重みも豚汁へ通ず。重成の両肩はすこぶる快調であった。

 
さてさて、私だけでない、メンバーにもカセットコンロまで持たせてある。そして、豚汁隊長は、
徐に具をテーブルに広げはじめた。豚肉を筆頭に、牛蒡、人参、大根、長葱、さといも、こんにゃく。あさつきや油揚げまで揃っている!さすがは豚汁隊長だ。里芋とこんにゃくは予めゆでてきてくれたそうである。さすがは豚汁隊長だ。
フランスはトンジール地方発祥の豚汁。周辺のホテルやレストランでは、「トンジリエ」と呼ばれる豚汁コーディネーターの存在が欠かせない。勿論、胸には豚の金パッチである。ワインに白・赤があるように、豚汁にも白・赤がある。合わせもある。トンジリエの資格習得はかくも厳しいが、我が豚汁隊長がトンジリエになるのも時間の問題であろう。
 
ゴールデンウィークの時も、石割山や足和田山で鍋で調理しているグループに垂涎の視線を撒き散らし、いつかはやりたいと思っていた光景が、眼前に広がったのである。走馬灯のように駆け巡る、

 豚汁。

喘ぎながらもこの山行きの最難関をクリアした初心者氏が一変して豚汁鍋奉行と化し、手際よく豚汁を作ってくれた。あれよあれよという前に、鍋の蓋が閉まらなくなるほどの具沢山に膨れ上がろうとしていた豚汁。急成長を遂げる豚汁に、ただただ目を見張っては感嘆符を与えるしかなかった。
1,355m、足和田山、山頂。豚汁を囲むものは5人しかいなかった。豚汁鍋に火をつけるやいなや、太陽光線が暖かみを増したのである。富士は見えねど高楊枝。 
さて、一旦沸騰した鍋に、いよいよ味噌の投入である。遥かなる、豚汁。田子の裏にうち出でてみれば、豚汁。富士の高嶺に雪が降ろうが、豚汁。足和田山、1999年最後と思しき豚汁まであと秒読み段階である。ふと、脳裏に、Europeの「ファイナルカウントダウン」が過ぎった。

♪ファイナル豚汁〜ティルティッツーティルティッティッツ〜、ウォー、イッツザファイナル豚汁〜、はやく食いてぇ〜、ウォー(以下、紙面の都合上、省略)♪ 

霞む、トンジール。煮えた。よく頑張った。今年最後の豚汁よ。そして、今年最高の豚汁が、出来上がった。思えば、この豚汁に到達するため、艱難辛苦があった。まず、豚が屠殺されねばならなかった。そして、葱や里芋が栽培されなければならなかった。豚汁隊長がそれらを調達しなければならなかった。重成庵から、鍋や水を持ってこなければならなかった。コンロも必要だった。箸も、お椀も。トンジラーへの道程は、かくも遠かった。様々な思いを込め、一肉一菜ずつ噛み締めて行った。具沢山な豚汁は重成の眼前に登場するのは必然であったのかもしれぬ。それにしても、美味しかった。あまりの具沢山に、汁の相対比率が激減してしまったが、そんなことはどうでもよい。ミレニアム豚汁。こうして、豚汁千年史に新たな一ページが刻まれたのであった。 
豚汁に舌鼓を打っているだけでは済まされなかった。フォンデュ奉行が、板チョコと生クリームをザックから取り出したのである。しかも生クリームは前回の反省を基に、中沢の動物性である。「生クリームは高梨か中沢に限る」との言は、豚汁鍋奉行から。氏とデジカメ奉行は、ファミレスのバイト仲間だそうで、その某有名ファミレスでも高梨製は必須だった模様である。 
まずは生クリームを鍋に入れた。そして、チョコを割りながら、投入。マーブルを描き、なめらかなゆるやかなチョコ鍋になりつつあった。前回と違って見た目もよく、味もマイルドであった。 
すると!ドカドカッと大音声が一本木方面側登山道からこだましてきたのである。麓の牧場から、3人程が馬に跨ってこの山頂まで散歩にでも来たらしい。土埃が、舞った。それでも我々は、チョコフォンデュは渡さなかった。馬に乗ってたオジサンが物欲しげな視線を投げかけてはいたが、それでも我々はチョコフォンデュに没頭していた。 
やがて馬は去って行った。それでも我々はチョコフォンデュに命を捧げていた。 
木間に澄む、西湖。あれよあれよと食い楽しんでいるうちに15時近くなり、気温も下がってきた。鍋を片づけ、さて下山である。馬の走ってきた林道を通れば早めに国道に出られるのだろうか?詳細な地図を持参しておらず判断が付きかねたので、結局予定通り、三湖台を目指すことにした。そして、温泉が待ち遠しかった。 
このあたりから、霜によって山道が少々歩き憎くはなっていた。しかしながら、割と明るい林の間を歩いているうちに体も温まってきた。温泉が待ち遠しい。
大地、讃頌50分ほどで三湖台に到着。やはり記憶通り、足和
田山より見晴らしがよい。西湖、精進湖、そして
本栖湖。本栖湖の手前には、デーンと広がる青木
ヶ原樹海。見晴らしはすこぶるよかったが、気温
は下がってきた。ちょっと休憩して先を目指す。
温泉が待ち遠しい。
紅葉台へはそれほど時間も掛からなかった。売店は休業しており、トイレに寄ることもできなかった。結局、少し戻って、林道を下ることにした。温泉が待ち遠しかった。
 
林道を麓まで歩き進むと牧場があった。先ほどの馬もここに戻ってきたのであろう。結局、林道に分岐道はないようで、国道へのショートカットはなかったのだと思う。温泉が待ち遠しい。 
さて、国道には歩道がなかったがどうでもよい。後は、温泉あるのみ。日もだいぶ落ち掛かってはいるが、まだメンバーのエネルギーは残っているようだ。やがて道の駅の看板が目に入ってきた。あと500mである。隊員達には、「走ってもいいぞ」と司令を出した。もう、走るしかない。
事故後、初めての走りである。しかも、ジョギングシューズでなく、ザックまで担いでいる。でも走りに不安はなかった。5人のメンバーのうち、3人が先頭集団を形成し、私が一人飛び出した。ちょっと速度を弱めている内に、フォンデュ奉行もすぐそこまで迫ってきていた。次の瞬間、あの豚汁隊長までが走ってきていた。やはり、自分の言葉に責任を感じて、最後のラストスパートを掛けた。17時頃には全員、車に戻ってきていた。
富士眺望の湯「ゆらり」は到着時刻もよかったのか、かなりの客でごった返していた。今日の計画に湯河原の幕山案もあったのだが、そちらの温泉は12/29までしか営業しておらず、「ゆらり」は年中無休だという。
建物が3階建てになっている。3階には要追加料金の個室風呂があり、2階、1階は基本料金でほとんど楽しめるようである。2階にはその風呂桶敷地面積にたいして狭すぎると思われる洗い場と室内浴槽1つに、テラスに五右衛門風呂。五右衛門からは、昼間晴れていれば富士の姿を拝めるものの、すっかり辺りは暗くなっていた。3人程で一杯になってしまう五右衛門に同席したオジサン、熱海・伊豆方面を目指していたが渋滞で諦め、こちらに来たようである。
1階には、洞窟風呂と呼ばれる、ジャグジー系のやや低音浴槽、低温サウナ、そして露天である。露天の脇に室内桧風呂もあって、なかなか色々と楽しめる。
かなりの浴槽があり、風呂不精でも軽く一時間くらいは時間が潰せそうな温泉である。そして、売店には、ソフトクリームから、地元産発泡性黄金麦茶も用意してあった。我々は、山頂で楽しむ予定が気温の下降ともに低下した黄金水指数のため持ち帰ってきていた「富士山」を開けた。喉ごしを駆け抜けるほど冷えてはいなかったが、胃袋にほどよい水温がジワーッと心地よかった。
温泉を出たのが7時頃、道路渋滞もなく、快調に道志みちを飛ばして行く。ある店に寄ろうとしたのだが、生憎既に「迎春」ポスターが店の前に貼り付けてあったので、進路を変更した。この店、メンバー間では評判らしいが、次回食ったときに克明にレポートしたい。
車は往路と同じ道を引き返し、R16に辿り着く。途中で町田駅方面に曲がり、いよいよである。
−−−ラー道をゆく−−−
不定期連載 ラー道をゆく 第二十三話
町田 町田家
町田駅から歩くと7,8分くらいであろうか。
車で行ったし、町田はあまり詳しくないので
場所の説明がつかぬ。
豚骨、太麺。
ラーメン 550-?、チャーシュー麺 800-
ほか、茹で卵、のり、葱などが選べる。
盛りは普通、中盛り(+100-)、大盛り(+200-)。
山で疲れてるから何を食っても美味しい、と私以外のメンバーは口を揃えていた。が、私の胃袋は厳しかった。ラーメンに挑むにはそれなりの覚悟が必要であった。胃袋もちょっと疲れていたのかもしれぬ。
それでも、出汁はすするうちにこってり感に慣れて来て、中盛りチャーシュー麺で腹がパンクしそうになってしまった。中盛り程度でギブアップ寸前とは、我が胃袋も落ちたものである。
辛口評価のように見とれる可能性があるが、町田家はなかなか美味しかった。こってり。体調を万全にしてもう一度訪れたい。
−−−ラー道をゆく−−−
店の近くに酔っ払いがでけぇ声で喚きちらしていた。挙げ句に我々が食いおわったら、やつは道路に寝ていた。寒くないのだろうか。
終電の心配もあり、町田駅にて解散となった。

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今年、確かに未遂もあったが、いろいろな山に登った。いろいろな人達と。来年もまた、そうすることだろう。来年も山道をゆく。

(終わり)