MMC1白馬'98

川のざわめきのみが響いている。前日の雨からか、駐車場の至る所が渓流になっている。更けてゆく、猿倉の夜-----

【白馬平凡登山記】

8/14
前日の京麺絵巻三様が今日へのプロローグ、遠大なカーボローディングの一環であることにお気づきの貴兄も多かったに相違ない。ものの本には2、3日前のステーキが思わぬエネルギーを発揮すると書かれているが、言うまでもなく、その日もラーメンだった。
8/15
林道その1使用前を保つ面々
6時半の猿倉荘にはラジオ体操が鳴り響いていた。一行は、第二体操の筋肉ポーズに名残惜しさを覚えながら、山荘を後にした。小径を抜け、林道を歩いているうちに、1時間弱で白馬尻山荘に到着。一帯は水場やトイレが充実している。天気もよい。文句ない。
大雪渓を臨みて前日の雨の影響か、登山道が所々沢と化していたものの、火山である富士とは異なり、植物が目を潤してくれて歩きやすいし心地よい。白馬尻をすぎて15分ほどで待望の雪渓である。つい先日の新聞が、暖冬の影響で大雪渓ならぬ小雪渓と報道していたものの、それでも一行は所々で雪に足を滑らせざるを得なかった。ちゃっかりアイゼンを購入していた重成は、そんな隊員たちを尻目に快適な雪渓登りを続けた。雪渓ダッシュができるようになったので、雪渓3級合格である。
大雪渓前雪渓も筆の誤り
雪渓の続きはお花畑。トリカブト?も咲いている!また、花の合間から見下ろす雪渓も美しい。雪渓をバックに撮れるプリクラが登場するのも時間の問題であろう。岩場っぽくなってはきたが、歩き易さは富士山と比べ物にならない。やはりこれほど富士を目の敵にするほど、高山病が苦しかったのであろう。幸い白馬では高山病を体験することはなかった。しかしながら、今回もご多聞にもれず、起床時から下○のツボにしこりがあった。それでもあんま棒を巧みに駆使し水を飲みながら登っているうちについに下○の症状を克服した。「山登りをしながら下○を治す術〜但し、標高3400m以下」で近々特許を出願したい。
村営宿舎前登るにつれてガスが濃くなってきたり、若干一名の隊員がコマ送りのスピードでコロンでは白馬岳の山肌で大の字になったり、汗だくになったりしながらも、頂上から約30分の位置にある、村営頂上宿舎の門を叩いたのは午前中ぎりぎりのことであった。
素泊まり5900-、2食付き8500-、2食付き夜はステーキ、朝はクロワッサン洋食で9400-らしい。洋食は多分罠だと思うが、ステーキにはそそられる。標高3000mにして生ビールもある!ある!
山小屋は空いていた。夏休みぎりぎりまで山登りをするのは酔狂なのか、上高地の群発地震の影響を恐れてか?部屋で汗だくの衣類から着替えているうちに雲行きが怪しくなりポツリポツリと降り始めた。風もまた然り。頂上まで散歩する気も失い、うとんでゴロゴロしはじめた隊員たち。カードゲームもないので仕方なくしりとりで場を繋いだ。しりとりにも飽きてきたので、芸能人(グループも含む)しりとりに引き継いだ。「ず」が難しかった。めぼしい「ず」を消費尽くし、次に挙げられた人にビールを奢るという段になって、隊員は全滅、
しかし相部屋のオジサンの口から「ズンドコトリオ」という言葉が漏れた。我々20台ではその存在を確認することは不可能ではあったが、そのオジサンの自信満々の口調に従わざるを得なかった。オジサン、ビール獲得!
(注:このビール代は未だに払われていないという)
自炊小屋の宴場をなんとか繋いでようやく夜食の準備を始めた。コッヘルとコンロを持参してもらった。水場の充実ぶりを知らず、鴨居から私が1.5リットルの水を運んできたので、コッヘルに入れて、隊員一人ひとり思い思いのレトルト食品を温めていた。気圧が低いためか、ご飯の出来具合は悪い。しかしながら、山頂
で食うカレーや赤飯はとてつもなく旨い。そして、もちろん、琥珀色の飲料も勢いよく喉を下っていった。
晴れていれば千万の星空に巡り合えたであろうが、闇の中、食後の散歩に出かけることになった。食直後には一旦上がった雨もまた風とともに激しくなってきたため、この散歩は30歩ほどで中止になった。翌朝は晴れますように!
8/16
部屋の外ではゴウゴウと唸り声が聞こえる。3時半起床、4時半出発で5時過ぎのご来光を拝まんとするも、どうやら大嵐のようである。昨晩作ってもらった弁当もこの天気の中で広げれば一瞬にして冷たいお茶漬けになってしまう。仕方なく、5時頃、食堂に弁当を持っていって広げた。NHKのニュースではまた上高地の地震を報道していた。地震の時刻とわたしの寝返りの時刻は残念ながら一致せず。
昨夜、隊員全員で作成したてるてる坊主も功を奏さぬまま、思い思いのレインウェアを着込み、下山を決意した。レインウェアに合わせて赤いサックカバーも購入した。値札の定価と思しき欄にマジックが塗ってあり、2300-となっていた。
三山縦走コースはもっての他、楽と思われた栂池コースもゴンドラが動いていないという。頂上への未練を残しつつ、往路と同じコースを降りていく。風雨の強い中、ゴアテックスのレインウェアは異常に快適だった。しかし、、、、前回の富士山登山時に靴底に隙間が出来てしまったらしく、まず、床下浸水の被害となった。降りるにつれて濁流が径をふさぐ、ふさぐ。床上浸水までそれほど時間を要さなかった。風や水流に何度もバランスを崩しそうになった。下りの雪渓に危険を予想した他の隊員は、宿舎で買った簡易アイゼンを装着した。一寸先は、雪。ガスが立ち込めて視界が10mくらいに落ちた。靴が、冷たい。ゴアテックスは優れものだった。お陰でその下に着たウィンドブレーカの中はやはり汗だくだった。雪渓を無事に越え、白馬尻の山荘でも降りしきる雨。意外と脱水気味になるので水分を補給しながら林道のあたりまで辿り
着くとようやく小ぶりになってきた。やはり駐車場まで、午前中のうちに辿り着いてしまった。今回何が大変だったかと言うと、やはり荷物が汗でぬれてしまうことと、靴がびしょびしょになったことであろう。それを除けば白馬はやはり快適だった。一昨日到着時は真っ暗であった駐車場の側にはすっかり激流と化した沢が流れていた。昨日乾かした着替えも夢の跡。この時、替えの靴を持参しなかったことが後々命取りとなることは、若干予想がついていたのだが・・・
放心猿倉の駐車場を去り、お約束のように温泉に向かった。倉下の湯?である。ここの温泉は露天しかない。地上で幾分は鍛えている重成は、肩以外は微塵の筋肉痛も覚えなかったが、やはり広い湯船に疲れが飛んでいくようだった。休憩室から見た北アルプスの山々。安曇の国の昼下がりのそよ風がまた我々の疲れを労ってくれた。豊科インター間近のレストラン街では水をたっぷり吸った靴を半履き状態で歩いた。足の小指の皮が剥け、痛かった。ロイホで、3色カレーセットを食う。ラッシーなる飲み物が流行っているという。なんだそれは食い物か?これとヨーグルトドリンクとの違いがわからぬ。カレーはとても辛かった。
昼を食べたばかりであるが、既に閃くほうとう鍋。だが、そんな私の思いを余所に、隊員達は談合坂SAのレストランに一瞥も与えず通過していった・・・今日は白桃ソフトで我慢しよう・・・
歩きづらいので結局裸足のまま登山靴で闊歩しつづけた。そして、やがて町田に辿り着き、横浜線の人となりぬ。
さて、足のかぶれはまだ治っていない。推定全治2週間であろう。これでは満足に下駄も履けぬ。次回からは荷物が増えても麓までは下駄で行こう。