台風一過

不定期連載 山道をゆく 第134話
03/08/10 火打山
03/08/10 火打山(日本百名山、庵選千名山233)
(includes 不定期連載 グルメ街道をゆく
黒姫 信濃ブルワリー(地ビールレストラン))
【台風一過】

8/09(土)
庵庵−新横浜通−三ッ沢IC−新木場IC−R357−永代通り−葛西橋通り
−門前仲町食堂−箱崎IC−外環道−関越道−

8/10(日)
−上信越道−妙高高原IC−笹ヶ峰キャンプ場…黒沢橋…十二曲がり
…富士見平…高谷池ヒュッテ…天狗の庭…火打山…高谷池ヒュッテ
…十二曲がり…笹ヶ峰キャンプ場−売店−グリーンハウス−苗名の湯
−妙高高原タトラ館−信濃ブルワリー−道の駅しなの−信濃町IC
−上信越道−長野道−中央道−石川SA−首都高速−銀座IC−永代通り
−R1−

8/11(月)
−菅田道路−庵庵

−:車、…:歩き

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
夏休みである。ここ3年と続いたMMC大縦走大会も今年はメンバーのスケジュール調整が難しく、折りしも、異常気象さえも我々の行く手を阻んでいるかの様に見えた。それでも何とか、昨年の縦走組みが一路夜行日帰りの名山行脚へと足並みを揃えようとしていた。門前仲町で落ち合い、下拵えをする。折手亜号はETC宜しく瞬く間に首都高から外環道を抜けて行った。今回は久々の後部座席に身を沈ませて貰うと、体も正直なことに瞑想は深まり、関越道の記憶を確認せぬまま上信越道の人となっていた。見慣れた妙高高原ICには残念ながら未だにETC受信機が設置されていない。料金所のオジサンに問うと、今年中には全国的に設置される見込みだと言う。コンビニに寄り、池の平や杉野沢を掠めて笹ヶ峰を目指す。丑満時の県道に、昨年の縦走時の静岡県深北部地域を彷彿としてしまう。代行車は擦れ違わないであろうか。昨年の沿道は此方より幾分ジャングル度が高かったのだが。駐車場に至って見上げれば、昨年クラスには満たないが、満天の星空に息を飲まされた。夜行日帰りの山行きだからなのか、昨年程の逸り、期待や感動が今一つ沸かない。無数極まりない星空の下、何か取り残されている自分が居た。未だ疲労の中なのか。
駐車場でもまた仮眠を貪り、支度をして登山口を発つ。台風一過直後の晴天日には高気温が付き物だが、今日は果てしなく涼しい。涼しいのは嬉しいのだが、やはり異常気象は続いているのかと思うと末恐ろしさを禁じ得ない。太陽は瞬いている。何が悪いのか。涼しいに越したことはない、確かに、、、
多湿の中、歩速は中々上がらず、十二曲がり到着迄の時間は粗コースタイム通りであった。然し、此処からは俺には太陽がついている。久々の光合成だ。木漏れ日の隙間に高谷池ヒュッテに火打山山頂も見え隠れする。あの夢にまで見た尖がり屋根の高谷池ヒュッテだ。
ヒュッテのトイレに、従来見てきた方々の山小屋の其れとシステムを異にしている点が一つあった。紙がある。上等だ。ビニール袋がある。Why?紙の微生物に依る分解は「落し物」の其れより大変なのだろうか。紙は出すが自分のは持って帰れ、と言う事だ。持ち帰り量が多くなるのもナンだから、自ずと紙の消費量も抑えられることだろう。成る程!
涼しいが光合成の後には必要な麦茶タイムが待っていた。麦茶の偉大さを知る瞬間だ。今日は既に可也時間を費やしたなぁ。
小休止の後、山道に復帰すると、其処からは雲上の楽園の連続曲線であった。何時か観た、写真通りの箱庭であった。高谷池の照り返し。写真通り、或いは其れを凌ぐ美しさ。湿原で是だけ喧騒も少ないとは、満足度の高い山域だ。以降、図鑑等で名前の確認出来た花だけを挙げてみよう。
キチジョウソウ
ヨシバシオガマ
リンドウ
ワタスゲ
ハンゴンソウ
シナノキンバイ
リュウキンカ
ニリンソウ
カラマツソウ
オニアザミ、
オオハナウド
ヒメシャジン
オミナエシ
ミョウコウトリカブト
クルマユリ
...
貴方も晴の日を狙って、火打山に花を愛でに来ると良い。飾らない美しさは何を指す物か、驚嘆を覚えに来て欲しい。
山頂からの眺めも素晴らしい。遥か高谷池、向こうは妙高、後ろは焼山、南側には黒姫山がデカい。大空を掌握しよう。空の青さを思い知れ。天空との間に一切の遮蔽物がないことを痛感するが良い。寝そべると、体中の力が一気に抜けて行った。寸分の居眠りに万物からエネルギーを回復して貰ったように思う。気のせいかも知れない。だが、間違いなくアントニオは蘇った。
帰路も雷鳥平に雷鳥の飛ぶ姿はトンと見かけなかったが、特に天狗の庭に群生する生ワタスゲを肉眼で確認することが出来、感無量であった。また高谷池ヒュッテに戻り、ソーセージをボイルした。火打風味のコリコリ感に麦茶は喉を疾走して止まない。
下山時も粗コースタイム通りだったのではないか。此処のコースタイムは可也厳密だ。慣れない者は注意が必要かも知れぬ。
下山しては失ったエネルギーの修復方法に関する談義に余念がなく、取り急ぎ季節物としてカキ氷が食いたくなった面々は、駐車場の矢先の売店の氷旗を目聡く見つけては、メロン、イチゴ、レモンの昔懐かしい味を嗜んでいた。店内のテレビでは村上市の特集をしている。我々の未知な名産が目白押しであった。一つ、鉄板の上でじゅうじゅうと油を跳ねかしている村上牛が全員の脳裏に焼きついて離れなかった。
カキ氷を堪能してからは地ビールレストランであろうと、一路池の平方面へ戻る。すると、笹ヶ峰牧場が我々の視線を阻んでいた。あの白黒牛は乳牛か。ソフトクリームも食べたいな。乳牛の群れの遥か先には、茶毛の肉牛の群れが!をぉ、近くにステーキを食わせてくれるレストランはないものか、あ、あった!グリーンハウスなるレストランが牧場の先にあった。だが、頚城牛は生易しいものではなかった。
3,800円。
笹ヶ峰牧場の肉牛にありつくには、勇気、愛、精神力が全て欠けていた。この肉牛を平らげるには、根本的に旅の目的を覆さねばならなかった。あのカキ氷屋のテレビで偶々目撃してしまった村上牛。一体、幾らなんだ?
意気消沈してソフトクリームに甘んじた面々は気を取り直して再び池の平を目指す。400円、安けりゃいいや、と苗名の湯に身を委ねた。露天は無いものの、内湯にドップリ浸かっては庵速疲れの筋肉を癒した。否、風呂より地ビールと、意識は自販機の缶ビールを遥か超越していた。早速地図を頼りにタトラ館を目指す。寂れた佇まい。怪しい。銀河高原ビールレストランの、メニュー8割方墨ベタ状況への陥落振りを思い出す面々。其の扉を叩く勇気は誰も持ち合わせる事無く、折手亜号は180度方向を変え、長野県下に下ることになった。
そう、昨年の黒姫下山後の怪しい道案内具合、山間のど真ん中にブルワリーは存在した。東大の研究貯蔵庫も健在だ。ピザにソーセージに火打山で失ったエネルギーを補って余りある回復作業が続いた。ブルワリーの提供する5種類の地ビールのうち3種類は瞬く間に吸引されて行った。食べて良し飲んで良し。タトラ館に比べれば遥かに不便な地の利にも拘らず、来客に途切れが見当たらなかったのは其の味が証明していた。
食後の食事が必要な座氏がブルワリーに勧められた蕎麦屋は休業しており、道の駅などを彷徨うも結局は触手に触れず、仕方なく長野道の人となった。また後部座席で瞑想を深めてしまい、気が付くと中央道であった。関越は大渋滞のようだ。然し、中央道も負けてはいまい。上野原以東2車線化と登り坂小仏トンネルの合わせ技は優に車列を20km近くまで滞らせていた。圏央道とのジャンクション建設の前にすべきことはないのだろうか。高速料金は無料化せず受益者負担で良いと思うから、受益者の益になるような建設を切に望む。
門前仲町で休部号に乗換え、夜も遅ければ空いてるだろうと下道を転がした。R1は意外と、営業同行などで何時か来た点が今日線となった。其の線 は意外と長かった。

(完)

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

付録:

山旅アドバイス
・台風一過で泥濘や岩場は滑り易く慎重さが求められる。
・夏場は体力の無い人ほど早いうちに出発して早いうちに下山すべきでは?
・高谷池ヒュッテ宿泊は予約制。