父の影

不定期連載 山道をゆく 第130話
03/05/24 篭ノ登山
03/05/24 見晴岳(庵選千名山224)、三方ヶ峰(庵選千名山225)、
篭ノ登山(庵選千名山226)
(includes 不定期連載 グルメ街道をゆく 小机 すし勝(寿司))
5/24(土)
庵庵−中原街道−保土ヶ谷バイパス−八王子バイパス−R16
−入間IC−上里SA−横川SA−小諸IC−東部嬬恋線−地蔵峠
…見晴岳…三方ヶ峰…池の平…放開口…池の平駐車場…東篭ノ登山
…池の平駐車場…村境の丘…雷の丘…雲上の丘…地蔵峠
−休暇村鹿沢高原−小諸IC−藤岡SA−青梅IC−八王子バイパス
−淵野辺−淵野辺駅〜小机…すし勝
5/25(日)
−庵庵

−:車、〜:電車、…:歩き

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たったの2週間を我慢出来ない自分が居た。もう大分距離を置いたのでそろそろ山ノ神の許しを請いたい、などと下らない論理で、すっかり全盛期の成りを潜めた歩く本能氏を巻き込み、交通不便な山を探していた。5月も下旬とは言え、北関東以北では軒並み林道が未だ未だ冠雪状態の箇所も稀ではない。田代山の湿原が呼んでいそうだったが、車毎遭難の勢いすら否めない。仕事疲れが祟って勢いも週末に近付くに連れて萎んでしまい、北関東でコースタイムの短めの山をチョイスすることとした。
R16は可もなく不可もない混雑振りであった。然し、R16を利用して山に行くのは久し振り、正月の蛾ヶ岳行脚以来か。暫し車での山行から遠ざかっていた。我が野望を達成するためには矢張り車が必要である。近いうちに何とか入手を試みたいもだ。
未だに対面通行車線の残る上信越道も、漸く工事が進んで間も無く4車線化区間が延びそうである。だが上信越道には何故か運転し難さを覚えてしまう。対面通行は勿論だが、妙義や小諸高原では睡魔に幾度となく呼ばれるし、サンデードライバーが集中しているように思うのは気の性か。群馬県は今、眠りの中、あのガスがを晴らすのは誰だ。四川チックな水墨画の中に我々は今日も埋もれてしまうのか。天気予報は晴ではなかったのか。ガンバレ、群馬県、モスクワは、近い。
碓氷峠を越えると、長野県の祈りが通じ、次第に空は明るみを増していった。小諸ICで高速を下り、東部嬬恋線の上り道を進む。前に2台程タクシーがのんびりと走っている。タクシーとは思えない鈍足だ。ボッタクリだろう。ただ、佐久平や小諸駅からは1日2本、湯の丸まで路線バスが通じており、其のタクシーの乗客は適度な時間帯に走る午前中のバス便を逸したのだろうから、タクシー運ちゃんの思う壺は自業自得であろう。
地蔵峠には多くの駐車車両が確認された。此処からは烏帽子山や湯の丸山も左程遠くはない。だが我々は敢えて東を目指す。池の平の湿原に花が咲き乱れてはいないだろうか。湯の丸スキー場を唐松林から覗きながら、其の期待に大腿三頭筋がグリコーゲンの供給を勢い良く受けて止まなかった。
見晴岳山頂目の前のコマクサ園は、勢い無く広がっていた。女王には未だ季節が早い。三方ヶ峰からと言い、遮る物の殆ど無い展望無限大山塊に清清しさを感じるには、もう少し太陽の頑張りが必要かと思う。頑張れ。
さて、注目の湿原に花々の群生は、残念ながら期待するには及ばなかった。菖蒲も未だ目覚めぬ。石楠花も葉が頭を垂れ、ただ初夏を待っていた。一筋の光明は、山桜か。葉桜も黄昏期を迎えているとは言え、葉裏の臙脂色が柏餅を彷彿とさせて止まなかった。桜葉なら桜餅だろうと批判を敢えて甘受せざるを得ないが、この臙脂の色には真っ白な柏餅が良く似合いそうだ。しかも餡は漉し餡が必須だろう。カッコウの鳴き声は明らかに潰し餡を否定していた。
やがて東方には高峰温泉の建物が覗いた。確かに一軒宿だが、直向こうの車坂峠のスキー場やホテル群が五月蝿い。このファインダー内には雪のキャンパスが相応しかろう。池の平の駐車場にはマイクロバスさえ停まっている。篭ノ登を目指す者の殆ど、恐らく我々以外は皆、此処まで車なのだろう。此処から篭ノ登までコースタイム50分。50分では麦茶指数も上がるまい。
手前、母、黒斑山。奥、父、浅間山。噴火被爆を彷彿とさせる花崗岩砂礫を掻き分ければ、山頂到達も大した労ではなかった。湯の丸山、烏帽子山、村上山、西篭ノ登に反対側は水ノ塔山、高峰山、其の向こうは黒斑山か。うん、兄弟は揃ってるな、、、然し、お父さんはどす黒い雲の中だった。360°の大展望ではあったが、何か1つ、重要なものが足りなかった。父の身を案じつつも、何時しか堆積してオーバーフロー仕掛けてしまった麦茶指数を解放するため、仕方なく乾杯せざるを得なかった。霧散エネルギーは徐々に攻勢を極め、12時台後半には漸く父の姿を露にさせてくれた。漸く家族、揃ったね。浅間山は雲の中に今日も自らの噴煙を紛らわせていた。水ノ塔山から高峰温泉への稜線も美しい。だが無雪期は簡単過ぎる。雪の季節にも一度訪れてみたい。
諸般の事情で我々はタイトなスケジュールに追われていた。時と共に天候は更に上向いていたが、父の姿に後ろ髪引かれる思いで地蔵峠を辞去した。昨年の冬山シーズンに寄った休暇村鹿沢高原の記憶を頼りに群馬側へ下る。無雪期の14時過ぎは可也の空き具合で大分疲労も癒えた感慨だ。風呂後の生麦茶を惜しみ、土産を買って再び地蔵峠を越え、小諸ICへと戻った。睡魔と戦いながら何とか夕方には無事に淵野辺に到着。本能氏の実家に車を戻し、20時からの寿司へ向かう。
土曜日のすし勝は初めてだが、辛うじて我々の分2席が空いていたのみの盛況振りであった。今月末を持って長期改装休業に突入してしまうのだ。其れを惜しむ寿司ファンが今宵も美魚に語らい、美酒に酔い明け暮れていた。
i
(完)

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付録:

山旅アドバイス
・雪はまったくない。
・池の平駐車場は広いが、其処まで車で行ってしまって
ハイキングと言えるかどうか?
・すし勝は6月以降秋まで長期改装休業予定。