2003GW特別企画 『霧よ、開けよ』 第2部

不定期連載 山道をゆく 第127話
03/04/28〜 霧島山、開聞岳
高千穂峰(日本ニ百名山、庵選千名山212)
中岳(庵選千名山213)
新燃岳(庵選千名山214)
韓国岳(日本百名山)
白鳥岳(庵選千名山215)
開聞岳(日本百名山、庵選千名山216)
桜島(日本ニ百名山、庵選千名山217)
(includes 不定期連載 グルメ街道をゆく 宮崎 かぐら家(地鶏地魚)
桜島港 さくらじま荘(チャンポン))
4/28(月)
庵庵、羽田空港、宮崎空港、シーガイア、アーバンキット宮崎

4/29(火)
アーバンキット、霧島神宮、高千穂河原、高千穂峰、中岳、
新燃岳、国民宿舎みやま荘

4/30(水)
みやま荘、大浪登山口、韓国岳、えびの市営露天風呂併設小屋

5/1(木)
市営露天風呂小屋…六観音御池展望台…白鳥山…えびの高原駐車場
…大浪登山口…林田温泉(霧島いわさきホテル)=西鹿児島駅・蕎麦屋
〜開聞…かいもん山麓ふれあい公園キャンプ場

5/2(金)
キャンプ場…開聞岳…キャンプ場…開聞駅〜西鹿児島〜鹿児島駅
…鹿児島本港+桜島港≡湯之平展望台≡桜島港…さくらじま荘
…桜島港=桜島口=鹿児島空港→着陸場所=羽田空港〜京急川崎
〜仲木戸…東神奈川〜鴨居・松屋…庵庵


〜:電車、→:航空機、=:バス/リムジン、−:送迎車、
+:フェリー、≡:レンタサイクル(プチ歩き含む)、…:歩き/走り
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終章【開】

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5/1(水)
キリシマミツバツツジ 晴れた。さすが、えびの市営露天風呂だ。5時起きでそそくさと飯の支度をする。陽光だ。やっと光合成が出来る。林田温泉までのルートとしては大浪池経由の手もあるが、大浪池湖岸の狭い道には閉口モノだし、折角だから六観音御池や白鳥山にも寄りたい。夏の日差しだ。ブラボー。俺は五月晴男なのか。4月中はトコトン負け越している。然し、昨日までの負けはガスと共に忘却の彼方へと葬り去ろう。生きている。雨が降れば晴の日もある。六観音御池へのスポットライトも今日を逃すと一生訪れない可能性があるのだ。百名山のみを登る安直なハイカーが蔓延しているため、昭文社の山と高原の地図は掲載地域の統廃合が進んでいる。とても忌々しき事態である。百名山以外の山にもスポットライトを!!!山を愛せ!!!満遍なく!!!
全ての色が鮮やかである。昨日の今日だ。蘇ったのだ!!!六観音御池の水面には、硫黄岳や韓国岳の雄姿が映えている。水面はこうでなくては。栗野岳やその他霧島連山からも新緑の躍動がビッシビシ伝わって来るのだ。ニホンジカもホップステップする。コゲラも道を渡る。黒アゲハも舞う。今日も早起きは3ビットの得だ。勿体無い。この清清しさを放って置くなんて。。。
1時間強程でえびの高原の駐車場に到達した。7時台にしてさすがに営業を始めた店も無い・・・と思いきや、所謂ファストフードの店が動き始めた。「缶ビールは冷えてますか?」との問に金額だけ返答するオヤジ。一応冷蔵庫から缶を出して来たものの、冷えてはいなかった。午前7時台とは言え、既に庵速を駆使してきたのだ。キンキンに冷え切った1缶を用意すべきであろう。貴様には午前6時丁度に生ビールを提供した鏡平小屋スタッフの爪の垢を煎じて飲む義務がある。もうこの店では2度とビールは買わない。全く残念なことである。
休日には林田温泉までの適当なバス便が望めたのだが、生憎今日は平日である。快晴だ。未だアントニオは歩く必要があった。舗装路とは言え、未だ交通手段の寝覚め遣らぬ時間帯の栄えある鹿児島県道1号線は、アントニオの独壇場であった。飛行機雲に、緑、緑、緑。韓国岳の今日の笑顔には若干の悔恨も否めないのではあるが。大浪登山口を過ぎ、林田温泉方面への分岐に差し掛かる頃には、矢張りアントニオは舗装路には向いていないと感じ始めた。然し、葉桜が眩しい。
時折擦れ違うタクシーに誘惑されながらも、何とか約2時間のアスファルトの旅を終え、林田温泉に到着した。然し、温泉は10時半からの営業である。林田交通や鹿児島交通を買収したいわさきグループのホテルが目前だ。此処からは方々へバス便も枚挙に暇が無い。ただ、惜しむらくはえびの高原方面への便が非常に貧弱であることだ。タクシー事務所も至近とは言え、山行きにはコストが掛かるのが、金持ちの老々男女しか惹き付けられない所以と言っても過言ではなかろう。
待つこと30分、天文館行きバスがやって来た。片側1車線の道路が延々と続くのだが、中々飛ばすバスであった。明日も訪れる鹿児島空港を掠め、九州自動車道に進む。市街地に下りても目立った渋滞に嵌る事無く、11時台には西鹿児島駅前に到着した。
数年後の九州新幹線開業を目指して工事が急ピッチで進められている。橋上駅舎となり、中の造りも洗練されてしまっていた。旅情がまた一つ、失われていた。御多聞に漏れず、晩飯のサイドディッシュにと薩摩揚げ数枚を所望し、指宿枕崎線気動車の人となる。十数分も走れば錦江湾の抜けるような青い海が進行方向左側車窓に広がった。原始生物は水中から発したように、水には何か親近感を感じてしまう。海に抱かれて男ならば、燃える夢を持とう。九州のローカル線と言えども、エンジン増強改造車や新車も目立つ中、庵が乗車した列車はデビュー当時と外装が塗り替えられた程度の古参車両であった。是もまた人生なり。砂風呂で有名な指宿を過ぎ、JR最南端の駅、西大山を越え、初夏を思わせる陽気の昼下がりに、開聞駅へ到着した。
ガスが点かなかった場合のリスクを考え、コンビニに寄って明日まで日持ちしそうなパンを買い込み、天王山へと向かう。今日は一先ず2合目の公園でキャンプだ。黄金週間とは言え平日ともなると、キャンプ場はかなり閑散としていた。オートキャンプ用スペースと其れ以外のキャンパー向けスペースが分離されており、当然非オートキャンプ側に陣取った。中には車で来ながらもオートキャンプ場の喧騒を避けるためにこちら側に場所を構えるファミリーも見受けられた。バンガローにも殆ど人が入っていない。天泊自体も昨年の夏以来であるし、我が2人用テントを開けるのも更に一昨年前の秋以来のような気がした。今日明日は雨の心配もなかろう。テントを張り、ストレッチをしながら筋肉を解しつつも、あまりに暇過ぎたので16時台には飯の支度を始めてしまった。薩摩揚げに五目御飯を食し、歯を磨いて19時台には就寝してしまったかと思う。
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5/2(木)
就寝時は其れ程気温も下がるまいと思ったが、矢張り寒さに目覚めてシュラフカバーなどで防寒対策を重ねた。だが、遂にこのツアーは、一度もレインウェアのお世話にはならないで終わりそうである。
利尻と構図が似ている。山麓の天場である。だが、向こうは1721mの標高で此方は僅か924m。何れも百名山である。双方、海に囲まれているが開聞の町に美味い海の幸を食わせてくれる店が果たしてあるのだろうか。利尻の天場は無料でオートキャンプは不可だけど、此処は最低でも700円は取られてしまう。
今日は3時過ぎに携帯に起こされた。長い長い1日の始まりだ。利尻と異なり、丑満時に山を目指す者は庵以外には見当たらなかった。未だ踏みも見ず山道を、か細いヘッドランプのみを頼りに進むのは心細い。ただ、取り立てて傾斜がきつ過ぎる登りも無いのが幸いではあるが。7合目から8合目に掛けて大き目の岩がゴロついており、下手に踏み外すと大怪我モノであった。螺旋状の山道の左側、地図で言えば北側になるのであろうか、夜景が暗黒の中の気休めであった。星も降る。やがて空は薄墨色から紫橙色へ代わると共に、自ら説明の出来なかった不安の呪縛から解放されつつ喜びを感じた。登って来たことの正当性が、間も無く証明されるのだ。
錦江湾5時半丁度、山頂に到達した。ハラショー!!!其の名の如く錦に輝く錦江湾。イッシーはお元気ですか、池田湖。大海原、太平洋。あの塊は、種子島?此方は屋久島、宮之浦?登山道は1本道、誰とも擦れ違わなかったことから、今日も一番乗りであろう。夜景の末の鮮やかな夜明け。早起きは今日も3ビットの得であった。キャンプ場の面々は山登りをしないのであろうか。至極、勿体無い。
下山道はお気楽であった。往路で足を踏み外した箇所も明るければ何のことはない。幾組かのハイカーと擦れ違ったが、あの夜明けを観測出来なかった彼等は不幸に思う。午前6時台にして南国は初夏の陽気であった。庵と擦れ違った者は未だ大丈夫だろうが、其れ以降に登り始めると灼熱地獄を味わう予感もする。
キャンプ場に戻り、夜露を乾かしながらテントを畳むと、8時近くになった。ふれあい公園から駅方面への下り道では登校途中の開聞中学生の面々と擦れ違う。キャンプ場の売店詰め所が8時前にして開いておらず、祝杯を求め様にも求められなかったのが痛恨だが、午前8時台から中学生の前で麦茶缶を飲み干す様は教育上不適との山の神のお告げなのであろう。だが、国道沿いのコンビニは間違いなく我が意を汲み、我が胃は満たされた。山にスーパードライは良く似合う。
空き缶はきちんとゴミ集積所に残し、小さなホームの開聞駅に戻った。ジモティと思しきお婆ちゃんが声を掛けてきた。今朝開聞を登ってこれから桜島へ行くこと、また横浜出身だと話すと、お婆ちゃんも昔は登ったようだし、横浜には中華街とか山下公園に行った事があるらしい。矢張り横浜イコール中華街か。おばあちゃんの若かりし頃は鴨居が首都でなかったので話題にも掠らないのは致し方あるまい。一時は近隣にアザラシが生息していたと言っても、如何なものだろうか。
8時22分、既に鉄道戦国時代から20年近く見続けており、何の変わり映えのしない白地に青ラインの2両編成の気動車が到着した。昨日同様、中身はワンマン仕様化されているもののエンジン類は其のままな古参車両だ。西鹿児島乗換え4分が気になる。古参車両は馬力が足りず、そう簡単には遅延を回復出来ないであろうから。。。ターミナル西鹿児島には10時過ぎに到達することもあり、買出し列車なのか、車内は次第に老若男女でごった返して来た。車窓の錦江湾は今日も藍色を称えている。旅のフィナーレに相応しい眺めではあるが、アントニオの計画は未だ止まる所を知らないのだ。
懸念は杞憂に終わらず、西鹿児島駅到着は定刻より4分遅れた。ワンマン運転だから仕方ないのだろうか。遅れを克服可能な馬力のある新車の導入を切に望む。ターミナルとは言え、1本逃すと30分は電車がないのだから、ホームの辺境0番線乗り場から遥々5番線までダッシュを強要されたのが悔しい。西鹿児島まで+180円の追加運賃は既に先程の車内で支払済みなので、乗らざるを得ないのだ。接続列車は一応待ってはくれたが、要らぬ所で汗を掻かされたのが腑に落ちないぞ。
3両編成の国分行き電車は、其の先頭車両はマニアの唸る、グリーン車改造車両で、他の車両と異なり、ボックスタイプでなく背凭れに傾斜のあるプチブルジョワな座席であった。惜しむらくは其のことに気が付いたのが鹿児島到着寸前であったことだ。嗚呼、恨めしい、指宿枕崎線の遅延よ。
フェリーからの桜島 さて、今ツアー最初で最後の航路区間のため、鹿児島本港へと歩を進めた。桜島へのフェリーは24時間運航、しかも最頻時は10分間隔で運転されているのだ。侮り難し、桜島フェリーである。港の待ち時間も少ないにも拘らず、車を次々に載せ、流れるように港を発って行くフェリーの様は壮観であった。券売機も特に無く、向こう岸で現金で運賃を徴収するシステムだ。券片という紙資源の無駄を見越してか。
シラス台地の百万の生活の幸を祈りながら錦江湾は漣を打っていた。桜島までは僅か13分の船旅であった。気楽な船旅、楽しいな。
さて、桜島口へのバスの時刻と乗り場を確認してから、自転車を借りに行く。暇そうにしていたお爺さんの対応だ。スクーターは2500円もする。自転車は1時間400円、2時間でも600円と言う。標的までは1時間強と見積もり、其れでもバスの時刻まで風呂ビールの余裕がある。取り急ぎ、1時間程度の積りで借りると宣言すると、親切心か、観光マップにて目指そうとする方角と反対側の海岸や公園を散策すればほぼ1時間程度だよ、などと懇切丁寧に説明してくれた。違う。そんな事をするために海を渡って来たのではないのだ。態々余計なルートを説明するな。余計なお世話だ。山だろう。この大ザックを見てアントニオが何者か、察しが付かないのか。「山へはどれくらいで行けますか」と問えば、「外国人が2人程下りで勢い付き過ぎて放り出されて病院送りになったから、絶対に行ってはいけない」などと啖呵を切り出すではないか。ふざけるな。客は俺だ。客の俺に注文付ける気か。はは〜ん、どうせブレーキ整備不良なのだろう。利尻のオンボロレンタサイクルの悪夢が蘇りつつあった。
結局大ザックはデポさせて貰い、1時間分の前金を払い、さて店の前の自転車どれでも好きなものに乗れ、とのことであった。見た目は何れも利尻の物よりは綺麗である。どれでも今回は失敗はなかろう・・・一番端の1台を選ぶと、さぁ南へ指示通りに行って下さいね、としつこくのたまう。「いや、ちょっとこっち側にも行きたいのだけど」と反対側を指せば、「絶対山へは行くなよ」と釘を刺されてしまった。
案の定、ペダルがややギクシャクするシロモノであった。利尻の其れよりは数段マトモではあったが。お爺さんの忠告程度に大人しく従わねばならぬ程、軟ではない。俺を誰だと思っているのだ。当然かの如くアントニオは、桜州小前の交差点を右折し、針路を東へと採った。
湯之平手前久々のママチャリ、未明からの開聞岳登頂疲れ、昼寸前の南国の初夏と見紛う陽気に苛まれ、ギブアップ寸前になったら仕方なく手押ししながらも、順調にアントニオは山を目指していた。順調には語弊があった。汗水だらだら状態であった。ママチャリで往復1時間は早計だったかも知れぬ。まぁ良い。開聞岳に登った其の足で桜島をも制圧するのが我が使命であった。
港から45分は経過してしまっただろうか、何とか苦しみ喘ぎながらも湯之平展望所に到着。桜島の西壁が厳つい。噴火の影響で山頂方面は通行禁止になっており、此処湯之平展望所が現在一般人が到達可能な桜島最高地点であった。西南には錦江湾の彼方に我が開聞岳が泰然自若としていた。やることはやった。写真も撮った。失われた水分は補う必要がある。
ない。
ないのだ。展望所1階は土産売り場になっているが、桜島大根の味噌漬はあれども、麦茶の缶さえもないのだ。忌々しき事態である。飲酒運転は止めろ、との事か。病院送りになった外国人さんの事故は、ひょっとして飲酒運転が原因なのだろうか。桜島はハイカーの来るべき場所ではなかった。残念至極である。
さて、帰路は楽させて貰おう。が、粗方の予想通り、ブレーキの効きは非常に甘かった。当時発揮可能な最大握力を維持したまま、下り続ける必要があった。2人が病院送りになったのも容易に想像が付く。成る程!自ずの握持久力との戦いである。何故、桜島でこんな戦いをせねばならぬのか、甚だ遺憾であった。此処で一度気と共に握力を抜いてしまえば、火山灰の棺桶へ直行である。お爺さんの再三の警告を無視して此処で病院送りになってしまっては恥ずかし千万だ。お爺さん、悪いことは言わない。ブレーキは整備しておけ。そのうち国際問題に発展してしまうぞ。
往きも帰りも散々であった。良い汗掻いたどころでは済まない。港まで我慢出来ず、かなり手前のスーパーの暖簾を潜ってアルコールの販売の有無を問えば、3件隣りに酒屋があると、にっこり応えて貰った。アントニオの顔面中1mm残らず、麦茶の2文字で埋め尽くされていたことであろう。矢張り山の後にはスーパードライを引いてしまった。汗が見る見る引いて行く。素晴らしいスポーツドリンクだ。
お爺さんの元へ戻ると、また1人、整備不良車を掴まされ掛けている人が居た。予定の1時間は軽くオーバーしてしまったので追加の200円を支払い、何も言わずに店を出た。今日の仕事は終わった。
続週刊日本百名山に掲載されていたマグマ温泉に惹かれ、さくらじま荘の門を叩く。数分歩けばレインボー桜島と言う小洒落た温泉もあるため、建物の見た目で明らかに部が悪いさくらじま荘には平日の真昼間に庵以外には若干2名の酔狂な温泉客しか確認出来なかった。内湯のみだがマグマ色をした浴槽に恐る恐る浸かれば、マグマ親和力によって山疲れを癒すには適当な温度に設定されていた。マグマは意外と気の利く奴だ。
風呂には2名の客が居たのだが、13時過ぎとは言え食堂には人っ子一人も客が見当たらないのだ。準備中か!?一瞬疑ったが、開店休業状態なだけであった。何故かお勧めとのことで味噌味のチャンポンと、何は無くとも生麦茶を所望した。ジョッキ毎凍らせてあり、麦茶はキンキンに冷えて我が胃を大いに癒してくれた。また、チャンポンは巨大な器に具沢山、出汁は磯の香りがつ〜んと遠い夏の日の思い出を彷彿とさせて止まなかい。遥々来たぜ、函館〜。出汁が勿体無いと飲み干さんと躍起になれば、マグマ親和力の影響で再び汗だくになってしまい、思わず小ジョッキの支援を頼んでしまった次第である。さくらじま荘、中々、渋い。
2時過ぎの鹿児島交通バスに乗って桜島口を目指し、其処から空港行きの便に乗り換えた。バスは大隈半島を錦江湾を左側に長めながら快調に飛ばして行った。嘗ては国鉄大隈線だかが近所を走っていた筈である。海と反対側、山側を目を凝らせば、時折線路跡地を確認することは其れ程難しくはなかった。桜島、大きい。そして、美しい。故に大隈半島は、日本のフロリダなのである。
一時はアントニオの貸切状態に陥ったバスも、幾度に及ぶ乗客の入換の末、夕時の鹿児島空港に到着した。予定より3時間は早い。スヮ、往路と同様な1本前便へのシフトチェンジが可能か、と思いきや、SKYの鹿児島路線は1日3本しかなく、既に今日の2便は何時間も前にこの空港を発ってしまっていたのであった。暇を持て余したアントニオは、空港内のレストラン荒らしに躍起となった。1軒目、サイドディッシュの地鶏炭火焼は炭風味が香ばしかったものの、メインの芋ビールは最悪であった。芋は無理にビールかすべきではない。其れでは芋が可愛そうである。2軒目では霧島地ビールに切り替えたが、本日既に6杯目で、ムギチャーゼ摂取過剰気味で味覚神経が麻痺しており、爽やかさを覚えることはなかった。2軒目にて何か甘くて冷たい物を探し求めてしろくまにも手を出してしまった。社員旅行の沖縄で食ったしろくまより上等のように感じたのは気の性か。其の後、奇行文の下書きを認めれども中々時間が潰し切れず、搭乗までに更に2杯も所望してしまった。此処まで来ると全然美味しさを感じることはなかった。ただただ義務的に、ムギチャーゼを配合していた。摘みにと思って方々の売店を探したのだが、終ぞや黒豚コロッケの在庫のあった店を見つけることが出来ず、無念であった。
明日土曜から漸く黄金週間本番と言うこともあり、金曜最終のSKY便には微塵の空席も見当たらず、隣りは家族連れで喧騒は避けられず、現実には足早に引き戻されていた。
往路のSNA便同様、SKY便も羽田空港でのタラップとリムジンへのお世話は避けられなかった。預けた大ザックをターンテーブルから拾い、庵速にて京急線乗り場へ急行して自席を確保した。仲木戸から東神奈川まで歩き、横浜線の末、帰庵出来たのは夜11時過ぎで、此処で気絶すると明日が大変になると感じ、片付けをしているうちに日付変更線を越えてしまった。長い、そして長い、1日であった。
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付録:

山旅アドバイス
・宮崎空港から空港駅まで徒歩1分程度。
駅の待合室は狭いため、長時間待つには不向きかも。
・宮崎空港から南宮崎までは、実はバスの方が安い。
宮交シティは南宮崎駅から徒歩3分程度。
・宮崎駅午前7時に食堂類は営業しておらず。
・みやま荘は有償だが送迎あり。例えば高千穂河原まで大荷物を
取りに来てもらうなどという芸当もお金次第。
・えびの市営露天風呂併設小屋は寝具などのレンタルもあり。
酒類は近くで調達不可能。
・林田温泉は平日10時半からの営業。場合によっては使えない。
・林田バス、鹿児島交通はいわさきグループなので、
回数券の類が共通の可能性あり。(未確認)
・西鹿児島駅数分乗換えはダッシュの覚悟が必要。
10分程度以上の乗換え余裕があると無難かも。
・航空機にガスボンベは持ち込めず、没収される。
何か良い対策ないですかねぇ。。。