巻巻

不定期連載 山道をゆく 第139話
03/10/05 平標山
03/10/05 巻機山(未遂)、松手山(既出)、平標山(既出)
(includes 不定期連載 蘇ったカツ道をゆく
沼田 山彦(登場6回目))
【巻巻】

10/4(土)
庵庵−文教堂上白根店−港北IC−玉川IC−目黒通り−R1−永代通り
−葛西橋通り−神田−目白通り−練馬IC−土樽PA−塩沢石打IC−

10/5(日)
−清水−桜坂駐車場−清水−R17−平標登山口…松手山…平標山
…平標山の家…平標登山口−まんてん星の湯−山彦−沼田IC−上里SA
−大泉JT−美女木JT−江戸橋IC−門前仲町−R1−目黒通り−玉川IC
−港北IC−庵庵

−:車、…:歩き・走り

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
鴨池大橋が開通し、港北ICが近くなった。そして、ETC、見参。鴨居病院の前を抜けると、三京へのパスポートが其処にはあった。座氏に山岳地図を請願され、近所の書店を探すも見当たらず、かと言って池辺町界隈の住民は活字熱も冷めた様子で書店すら見当たらず、其のまま三京の人とならんとしていた。
ETC初利用の舞台であった。
こともあろうに、我が休部号の前に若干一台、コーナーを曲がって、港北ICに唯一存在するETCレーンに突っ込んで行った。夜だからか、其のレーンは兼用レーンになっていた。寸前を走る車は、果たして非ETC装備車であった。是ほどの痛恨はない。他の3レーンはがら空きなのだ。なのに貴様、我が前を行く!
まるでバージンを失って妊娠中絶を余儀なくされたような壮絶なショックを受けながら、三京を飛ばす。料金所を過ぎれば快適だ。何時しかショックを忘れ掛けた頃、多摩川橋梁手前からまた料金所渋滞である。右端が専用レーンだ。専用レーンに到達するまでが長かったが、非ETC車両が行列を尻目に、漸く大人になった気分であった。
目黒通りは交通量あれども流れていた。やがて桜田通り、即ちR1に合流し、皇居方面を目指す。馬場先門付近で右折し、永代通りを進み、座氏の折手亜号に乗り換える。
巻機山マップ購入再チャレンジを目指し、神田界隈の深夜営業書店に顔を出して見たものの、巻機山掲載刊は果たしてレア物のようで、其の書店にも終ぞや見つけることは出来なかった。
諦めて目的地を目指す。以前、茶氏と枚氏とでオグナほたかを目指した時に利用した目白通りにて一路笹目を目指す。此方もまずまずの流れ具合であり、何とか練馬ICの敷居を跨ぐことに成功した。
途中、座氏の運転で気を良くして暫し気絶を貪りながら、土樽PAにてトイレ休憩する。寒い。トンネルを抜けると秋風が棚引いていた。目標の巻機山の麓、清水地区へは塩沢石打ICからも其の向こうの六日町ICからも粗同じ程度の距離に陣取っており、当然安上がりに手前で下車する。
が、此処で真っ直ぐ標的を目指したのが敗因であった。
コンビニ看板に「酒」表示が中々見当たらない。清水地区方面に進めばもう其の存在を考えることが出来ず、かれこれR17を北上せざるを得なかった。行けども行けども酒印、見当たらず。この地域のコンビニには態々酒印を冠していないのではなかろうか、との淡い期待を打ち砕いた次のコンビニにピットインし、酒の売ってる店を訊ねれば、結局六日町ICを遥か越えてしまっていた。
漸く酒にありつけて揚々とした面々は粗とんぼ返りししながら清水地区を目指した。山家以外に利用する者が居るのか訝しい民宿街を過ぎ、坂を駆け上って桜坂の駐車場に到着した。此処まで来て有料駐車場なのか。ま、1日500-なら入山料と思うべきか。翌日は冷えるであろうから寝袋を纏って横になった。
諦念を助長する雫の音が、仕切り無しに鳴り響く。天気予報図に傘マークは無かった筈なのに、我々は雨宿りを余儀なくされた。5時台出発を目論んではいたが、この雨に出鼻を挫かれ、様子見を決め込んだ。かれこれ小1時間の反省後、雨は止んだが雲が立ち込めていた。車の台数は可也増えており、慣れているからか、ハタマタ単なる無理か、幾人もの老々男女が支度を進めており、もう既に何人もが山頂を目指して此処を発ったことであろう。このまま登っても、要リベンジものになろう。雨上がりの急登は地獄だろう。ガスの山頂が分かり切っているなら諦めるか。駐車料金も惜しく、名誉の撤退である。
山は諦めて何処か温泉だけでもと思っている我々を余所に、一応天候は回復に向かっているようで、座氏が板下りの下見にと懇願するため、平標山を目指すことにした。塩沢石打ICを過ぎると間も無く、酒マーク付きのコンビニが存在するではないか!な、なんだ、此処にあるなら逆を目指すべきだった。。。今更補給すべきアルコールもなく、諦めてR17を登るしかなかった。
平標登山口駐車場は既に可也の賑わいである。既に踏峰を済ませているアントニオとしては、せめて前回とは逆ルートを選択したく、平元新道は後回しにして先に松手山を目指すことにした。幾人の老々男女が挙る。すぐに舗装路から逸れて土剥き出しの山道へと道標は誘っていた。「林道経由の道はないのか」のたまう翁あり。確か、前回来た時と道の様子が違うので、私も思わず地図を見直したが、そうだ、前回は此処に帰還せず宿場の湯へ直行したため、様子が違うのは当然であった。この山道は急だから林道を回りたいとほざく翁を見捨て、山道を行く。平標程度で急坂とのたまうものか、、、翁よ、、、
何処にでもある傾斜だ。取り立てて大変なことはない。雨上がりで若干滑り易い程度だ。何処の山も一緒だろう。マツムシソウにノハラアザミが共に紫色に最後のエネルギーを振り絞り、往く夏を惜しんでいた。天候は更に徐々に回復の兆しを見せてはいたが、山頂付近は暗雲の中である。未踏峰の巻機は惜しいが、陽光が其の未練を払拭せんと我が背中を押していた。
松手山からは、晴れてさえすればさだまさしワールドが全開の筈だった。拓ける稜線の木道は北の国への回帰に他ならなかった。
ああ〜ああああ〜うう〜ううううう〜
るるるる〜るるるるる〜・・・
富良野の町にも、もうそろそろ小雪が舞う頃だろうか。振り返れば苗場山は我が掌中だ。然し、北側、即ち巻機は慮りも空しく、未だ雲化粧の眠りの中であった。既に踏みも見た平標。偶には人に歩速を合わせて見ようではないか。カエデは異常気象の影響か時折葉が焼け焦げている様だった。ナナカマドは意外に鮮やかである。今年の冷夏は紅葉を鮮やかさを極めさせないような気がする。然し、ナナカマドは紅に燃えていた。笹の青さとは必然的に非連続なのは致し方あるまい。其れが今年の平標山の回答なのだ。
平標山の家迄は木道を延々と下るのみ。前回は店仕舞いしていたとは言え、今回は麦茶にありつけるかと思いきや、営業中なのだが生にはとてもあり付けそうにない佇まいに絶句し、涙を飲んで辞去した。
平元新道は歩き難いこともなかった。そう言えば、勝沼マラソン大会まで、後2週間しかないことを思い出した。練習する時間がない。来週も山遠征だろう。アントニオは平元新道を降り切るや否や、林道を小走りに駆け抜けて行った。犬連れの散歩者も居る。犬の老廃物が生態系を乱す懸念から犬連れは禁止されている筈だが、人間が偉そうなことを言えるのだろうか。犬が自発的に平元新道を荒らすことは先ずあり得ない。連れて来ている人間は、自然界に優しいのか。ブーツに付着した種子類が生態系に影響を与えることを理解しているハイカー、似非ハイカーは幾人居るだろうか。私は最低限、山毎にブーツを洗う。最低限でしかないが。
駐車場に戻り、三国界隈からメシと言えばあれしかなかろうと胃液も迸る。其処の営業時間は既に平標の山頂下から電話で確認済みだ。後は汗を流す湯を探すのみ。途中でコンビニに寄った隙に観光誌を貪れば、昨冬にオープンしたばかりの日帰り温泉があるではないか。R17から若干小道に逸れ、手前に犇く「温泉あり」の看板の誘惑を振り切れば、まんてん星の湯の清楚な佇まいに溜飲が下がる一方だった。洗い場が狭過ぎる。数々の温泉を制覇した者の謹言に耳を傾けさえすれば、4槽もある露天風呂は千客万来を約束して止まないであろう。併設食堂のメニューにもそそるものがあった。然し、今日は此処では油断出来ない理由があった。然るにソフトクリームのみに甘んじた。
R17を更に下り街へ入る。やがて、駅前を通過すれば、あの看板が。山彦だ。4人以上ルールを振り切って座敷に上がる。さて、今日、あの切り札を出すべきか。然し、今回の平標は前回よりも更に行程を短縮しており、切り札投入には時期尚早との見解に纏まった。結局、また、躊躇してしまった。南極、ダブル。南極大陸の二重奏は次回までお預けとなった。然し食堂の主は我が丼にワンゲル盛りと称して御飯粒を堆積を禁じ得なかった。今日も1枚だが果てしない肉厚にただ平伏すしかなかった。南極ダブルは矢張り時期尚早であった。
関越自動車道は、藤岡からの上信越道合流車渋滞など適度に滞りを余儀なくされつつも、中央道の其れより遥かにスムーズであったと思う。門仲で休部号に乗換え、今日も其処から約1時間程で帰庵した。巻機山を巻いた。果たして正解だったのだろうか。あの状態では泥濘に足を取られていただろうと、痩せ我慢の日々は続く。

(完)

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付録:

山旅アドバイス
・平標山の家に何か買い求めることは難しいかも。
・山彦は10時から19時まで営業、昼休み無し。
水曜定休だったと思う。
電話0278-23-5830まで確認を。